中央化工機株式会社が1983年3月に発表した技術資料「振動流動乾燥機の概要と用途」を、技術アーカイブとして掲載します。
本資料では、当時の振動流動乾燥機(VD)について、基本構造、VU型・VH-B型・VH-C型の各型式、振動による粉粒体の流動パタン、回分式・連続式の特徴、間接加熱・冷却・減圧乾燥・溶剤回収への適用性を解説しています。
また、粗粒、微粉、短繊維、ペースト、スラリーなど多様な材料へのテスト例を示し、振動数や媒体投入が乾燥速度に与える影響、実装置での応用例、さらに振動蒸発機(VE)への展開も紹介しています。
発行当時の資料のため、機種名称・仕様・表記の一部は現在と異なる場合がありますが、振動流動乾燥機の原理や用途検討、乾燥装置選定の参考資料としてご活用ください。
振動流動乾燥機の概要と用途
中央化工機株式会社
Powder & Chemical Plant
〒470-11 愛知県豊明市新田町中ノ割3番地
電話(0562)92-6181(代)
「第10回化学工学講演会講演録」Vol.10 1983年3月
振動流動乾燥機の概要と用途
井上 勉
1. はじめに
Table of Contents
弊社の微粉砕機、振動ミルは昭和36年に開発され、その後幾多の改良、経験を積み重ね、高い評価を得る粉砕機となりました。この間、振動機構を他の化学装置に応用することがいろいろ試みられた。
こうした中の1つであります、今回紹介する振動流動乾燥機(以下VDと略す)は、振動ミルの運転中、粉砕筒内のボールが、流動化現象を呈することに着目し、粉砕媒体を投入しないで、粉粒体だけを充填し乾燥機として応用できないかと、研究開発を進め、弊社独自のユニークな流動乾燥機として販売を開始しました。
現在、VDについての詳細なカタログは用意して無いので、本稿はこれを補足するような内容に留意した。
なお、VDに使用する振動機構やそのメカニズムは、ややラフな使い方であるが、振動ミルやファインバイブレーションミルと類似しており、省略させていただきます。
2. 振動乾燥機は新しいジャンル
乾燥機は歴史も古く、多種多様な型式のものが市場に出ており、その分類法も多様である。従来、流動層乾燥機の1つとして、振動併用型を取り上げることが多かった。
しかし近年、振動の名を付けた乾燥機が多くなり、’82粉体工業展の例にも見られるように、振動乾燥機と言う独立したジャンルが形成されつつある。
熱風受熱型の単段式、多段式あるいは振動流動凍結真空乾燥機など市販もしくは報告されているが、弊社のVDは間接加熱型に分類されるものである。
3. VDの基本構造と特徴
VDは回分式として、図1のVU型と図2のVH-B型、また連続式は図3のVH-C型に大別される。
乾燥筒はVU型が円筒堅型形状、VH型は円筒横型形状であり、いずれも全面ジャケットがとりつけられている。この乾燥筒をスプリングで支持し、振幅3m/m前後、振動数1200~1800V.P.M.で駆動、乾燥筒内の粉粒体を流動化させる。

VU型の駆動源は2台の振動モーターを使い、粉粒体の排出口は底部中央に設けられる。
VH-B型は小型機の場合、1台の振動モーターで駆動する。中大型機では汎用横型モーターを使用し、弊社独自の振動源を採用している。排出口は片端にあり、乾燥筒をやや傾斜させ排出を容易にしている。なお、VH型は乾燥筒の中心軸に内筒を設け、伝熱面積の増加を計る場合がある。
VH-C型は回分式のVH-B型がベースとなる。VH-B型の乾燥筒寸法は、内径と長さの比が1対2となっているが、連続式の場合、必要滞留時間に応じて1対3、1対4など乾燥筒の長さを決定し、振動源も増加させる。また層厚の確保やショートパス防止のため、堰が数ヶ所設けられ、この堰にはゲートがあり、乾燥終了後、滞留している乾品の排出を可能としている。
以上のような、VDの構造と特徴を整理すると。
(イ)振動だけで粉粒体を流動化させる。
○粒子破壊が少ない ○所要動力が小さい
○局部加熱や乾燥ムラが少ない
○粉体の飛散が少ない
(ロ)ジャケットによる間接加熱で、乾燥筒が密閉構造。
○温水、水蒸気、熱媒油又は冷水が使用でき、加熱、冷却が容易
○減圧乾燥ができシール性良好
○溶剤の回収が容易 ○熱劣化や酸化劣化の防止
○不活性ガスのシールができる
○スラリーやペースト状のものも対応できる
(ハ)乾燥筒内部は、撹拌羽根や流動床多孔板などが無く、極めてシンプル。
○洗浄やサニタリー化が容易
○コンタミが少なく、乾燥材料の切り替えが容易
(二)振動させながら排出する。
○排出口の閉塞が防止できる
○完全排出が期待できる
などが考えられる。乾燥機は一般的に、長所と短所が共存しており、構造的特徴をつかみ、使い分ける事が大切と思う。今までの経験では、対象材料の物質名や外観形状だけで判断する事は、時として意外な結果となることがあり、テスト確認は重要な要素となる。
4. 振動方式の違いと粉粒体の動き
(1)VU型の場合
VU型は振動方式が、振動エレベーターと類似している。粉粒体は主に底板から振動を与えられ、図4のようなパタンで流動するのが普通であるが、粉粒体の含水率や固有物性により、外壁への盛り上がりが高くなったり、平面に近い状態で流動する現象が見られる。
VU型の場合、全容積の20〜30%を標準充填量としている。これは静止時の底鏡板容積よりやや多い量に相当する。標準充填量より増加させるに比例して、流動状態が悪くなる反面、標準より少なくしても、流動の悪化は認められない。
前記の通りVU型は、底板からの振動授受が主体のため、充填量の増加により、粉粒体層で次第に加振力が減衰するものと推測する。また流動状態が、VH型と比して円やかな動きであり、流動性の悪い粉粒体にも適用できる性質を持っている。これまでのテストでも、VH型で流動しない材料が、VU型で可能であったことが数例報告されている。
こうしたVU型の特性は、容積の割に充填量が少なく、大型化に難点があるものの、捨がたい点である。少量生産や研究室などで、原材料の量が一定しなかったり、種類が多様な時、便利な乾燥機である。
なお、通常は粉粒体が外に押し出される動きをするが、2台のモーターの内1台を逆転させることにより、中央に集積する動きとなる。これを利用して排出を行なっている。

(2)VH-B型の場合
VH型はVU型とかなり異なった性質を持つ。振動の授受は、乾燥筒全周からなされ、動きはVU型よりやや激しく、また堆量も全容積の60%前後が適切であり、量を減少させるに従い、流動状況が悪くなることが確認されている。
流動パタンは図5が通常であるが、含水率、粉粒体の性状、操作条件などにより、図5とまったく逆の方向に動いたり、また図6のように両側に分かれて流動するのが観察され、さらにある段階で、図5のパタンに戻るような複雑な動きを見せる。
図7は微粉によく見られる例で、減圧下でエアをリークした時など、エアを粉粒体が取り込み、小さな気泡が集合膨張し、上方に噴出した状態である。
粉粒体は、ある程度の層厚で流動化している。即ち、不安定な厚い粉体層であるため、微粉体の場合、真空度や水分あるいは空気流など僅かな外乱要因の影響で、顕著な流動パタンの変化を引き起こし、こうした複雑な現象を呈するものと考えられる。関係因子が多く、因子と流動パタンの関連は解明されていないが、再現性があるため、今後の研究課題となろう。
排出については、振動コンベアを連想していただきたい。

(3)VH-C型の場合
連続式は構造的に回分式VH型と同じであり、流動状態も類似している。連続的に供給された粉粒体は、図8のA室堰高さまで達すると、次のB室へ溢流し、順次出口へ進む。
滞留時間は、供給量の増減で調節できる。

5. テスト例
VDは乾燥筒内部が、単なる容器であるため、乾燥材料の形状に対応しやすく、粗粒・微粉・短繊維・ペースト・スラリーなどこれまで広汎な目的でテストされた。
次頁の表1は、その一部抜萃である。各企業の秘密保持など制約があり、材料名やデーターが不完全であることは御容赦願います。
目的の原材料が、基本的にVDの対象となりうるか否かは、テストサンプル量が、標準充填量より小々少なくても判断できるが、スケールアップの基本数値を得るためには、標準量に近い量で実施しないと、能力算定誤差が大きくなり注意を要する。
製品含水率や粉化、二次凝集、造粒、軽微な付着、乾燥時間などの要素は、その程度や重要度、許容範囲にあるかなど、最終的にユーザーの判断を待つことになる。
セラミックスなど新素材に多く見られる例で、名称や外観形状が同じでも、乾燥特性がまったく異なり、類似性のないものがある。材料自体の物性もあるが、バインダーなど微量添加物の影響は無視できない。
以下に表1の一部補足をする。

(1)総括伝熱係数について
表1のU値(総括伝熱係数kcal/hr℃㎡ 静止時材料接触加熱面)は、絶対的なもので無く、ある材料をある条件下でテストした結果得た数値を基に算出した値であり、一部仮定数値を含むことがある。実装置設計にあたっては、この点考慮し決定している。
テスト例相互間の関連は、対象材料の乾燥難易を示す目安程度と考え、方式の異なる乾燥機と比較する時も、同様のことに十分注意することが必要である。
(2)乾燥曲線
図9は②合成樹脂の乾燥曲線である。限界水分 Wc=3%、平衡水分 We=1.5%であることがわかる。総括伝熱係数は、樹脂の値としては平均的なところである。
樹脂はあまり高温で乾燥できない点もあるが、溶媒がどのような形で存在するかによって、乾燥速度を大きく左右する。
図10は結晶状合成樹脂の乾燥曲線である。限界水分が、かなり高い所にあり、乾燥過程を観察すると、乾燥が進行するに従い、溶媒に含まれるある種の成分が膜を形成し、これが水分の粒子内拡散の抵抗となっているように思われる。
初期段階の水分率を低減する目的で、原材料を機械的に脱水し、洗浄を十分に実施することにより、乾燥抵抗となる要素を除去し、付着などの付加的な問題も合わせて、乾燥特性を改善することが期待できる。

(3)乾燥速度に与える振動数の影響
表面付着水だけと考えられる⑤金属粉を、表2の条件下で乾燥し、乾燥材料の温度上昇の状況を示したのが図11である。
A・B・Cは、同一条件で振動数だけ変えた。明らかにその差が認められる。このように乾燥速度は、振幅よりも振動数に依存することが数例のテストで経験されている。合成樹脂のような伝熱の悪い粉粒体の場合、これ程顕著に差は出ないが、同様な傾向は認められる。
Dは加熱温度を高くした場合で、当然Cより良好な結果を得ている。しかし、Eは少量のエアパージをし、蒸発水分の追出しを強制しているが、常温エアを使用したため、その効果が無く、ほぼCと同じ曲線に重なっている。

(4)媒体投入の効果
④非鉄酸化物や⑩白色無機物は、ペースト状の原料であり、当初ほとんど流動化しない。ところが乾燥が進むに従って、壁面から剥離し、塊状の時期を経て、微粉末と数ミリの粒子の混合状態で乾燥が終結する。
ここで、15%前後の媒体(アルミナボールなど)を適当料、原料と一緒に投入し乾燥すると、解砕も兼ねることになり、微粉末だけの製品として回収できる。媒体の投入量は、明確な適正量が求められていないが、概略原材料重量当り50~150%程度で充分と思われる。
こうした媒体投入の効果は、解砕だけでなく、図12に示したように、乾燥速度の促進にも寄与している。
乾燥過程の塊状で進行する段階が短かく、粉化が早いため効率が高められるものであろう。ある条件下で、図12の総括伝熱係数を試算すると、媒体無しで76 kcal/hr℃m²が媒体を入れることによって、185kcal/hr℃m²という結果を得ている。
なお、⑧研摩材などは、類似した経過をたどるが、媒体投入をしなくても、粒状となる傾向は少なく、粉化するものが多い。

6.実装置と応用例
(1)
図13のフロー図は、VU-100型と水封式真空ポンプ・コンデンサーの組合わせによる減圧乾燥装置の例です。
VU型は少量の材料でも流動化に支障なく、広範囲の材料に適応できるので、小型のVU(06・10・15型)と、こうした減圧系を組合わせて、試験、研究用に利用されることが多い。

(2)
図14は、VH-450/900B型を使い、有機溶媒を含むスラリー原料を、回分式で乾燥します。振動ミルなどで湿式粉砕された原料は乾燥機に投入され、乾燥製品を得る一例である。
VH-450/900B型は、振動モーター駆動を標準としているが、この例では耐圧防爆仕様のため、d2G4の汎用横型モーターを使用している。

(3)
回分式大型機のVH-1200/4000B型の減圧フロー図である。
仕込容量約3m³。

(4)
(3)と同様であるが、操作圧10Torr前後の高真空で操作するため、コンデンサーの冷却にチラー水を使っている。このフローの場合、防爆仕様のため、チラーユニットなどは非防爆エリアに置かれている。

(5)
図17は、連続式の一般的な1筒式大型機です。乾燥筒直径と長さの比が1対5であり、滞留量は4m³である。

(6)
2筒式VH-1200/6000C型と減圧系を組合わせたフロー図。
常圧乾燥の時は、減圧系の替りに排気ブロアとなります。2筒式は、通常上下段同じ加熱温度ですが、上段で加熱し、下段で冷却する使い方もある。

(7)
やや特殊な例です。VDはジャケット加熱を標準としていますが、200〜400℃の高温加熱を必要とする場合、図19のような遠赤外線輻射加熱や鋳込み電熱ヒーター伝導加熱などの利用が考えられます。
乾燥目的だけでなく、熱処理や焙焼などに応用され、材料形態によっては、ベルト式トンネル炉よりコンパクトな装置となります。
本図は連続式であるが、回分式も同じように使用できる。
また、電磁誘導加熱装置は防爆対策が可能であり、振動装置の加熱源として応用することは、今後の課題となる。

(8)
残渣を含む溶液は、蒸発・蒸留操作で揮発分を留出すると、蒸発缶底部や塔底に高濃度の残渣が蓄積され、適時これを排出除去しなければならない。
こうした作業の改善や連続化を計ったのが、図20のフローである。媒体(砂・砂利・ビーズ・ボールなど)を、適量充填し、駆動・加熱昇温後、原液を噴霧供給すると、揮発分は蒸発回収され、残渣はスリットで媒体と分離され、連続的に乾いた残渣として排出することができる。
VDのこうした応用を、乾燥機と区別し、振動蒸発機(VE)と呼んでいる。
現在有機溶剤廃液の回収目的で稼働しているが、廃液に限らず、生産工程で溶液と残渣の分離を、蒸発でおこなっている所に利用できることと思う。特に回分式や半連続式と比べ、作業環境の改善、連続運転による効率向上、歩留まりの向上などが期待できる。
ただ、含有残渣が媒体を塊状に固化する溶液があり、乾燥機と同じく、テストによる確認は大切である。

7. おわりに
VDの応用はこの他、粉末にアルコールを噴霧処理した後、粉末を乾燥し、同時にアルコールを回収する例などが、すでに実現を見ている。さらに混合、造粒、反応など複合した操作が組合わされた粉粒体の処理装置が、次第に増えていくものと期待する。

